俳句上達のヒント(2)ー暗闇でしか見えぬものがある 暗闇でしか聞こえぬ歌があるー

掲記は、先日ハッピーエンドで終了したNHK朝ドラでの、尾上菊之助さんが演じた桃剣の決めセリフです。このセリフは裏を返せば、この世界には、目には見えない大事なものが存在している、ということを言っています。俳句で名句とされるものは、地上からは見えない貴重な鉱脈を地下に見出し、それを17音で掘り出したものであると言えるでしょう。

これとは真逆に、”当たり前” と評されるものがあります。俳句を始めたばかりの頃は、この ”当たり前” の隘路に落ち込むことが多くあります。次の3句は、しおさい会での、約1年前のものです。

雷や光と雨に人走る
雷落ちて電流地下を走り抜け
草餅やよもぎの香りお茶うまし

それぞれ、雷に光と雨は付き物ですし、落雷すると電流が地下に抜けていくのは、物理的事実です。また、草餅には蓬が入っているので蓬の香りがするのは当たり前のことで、草餅を食べながらのお茶が美味しいのも当たり前のことです。

この3句に対しての私の参考例は、

尻はしょり逃ぐ人を追ふ日雷かな
雷落ちて昼寝のもぐら飛び起けり
草餅を持ち寄る女子の茶会かな

でした。

”当たり前” を避けようと推敲することによって、より深みのある表現に辿り着きます。是非、今作った句が、”当たり前” のものになっていないかどうか、一呼吸おいて考えてみてください。