鬼を狩る子孫 第二部・過去編 第四章 伊賀(7)

虎の弾圧

「うちの谷の者や」

はっきりとした声だった。

人が割れ、その男が前に出る。

「山で木を伐ってる者や」

「この者は、外の人間やない」

打っていた男が振り返る。

目が鋭くなる。

「何やと」

一瞬の沈黙。

だが、それは長く続かなかった。

打っていた男は鼻で笑う。

「そんなことはどうでも良い」

「怪しい動きしとった」

「それで十分や」

次の瞬間、その男は助けに出た者を突き飛ばした。

倒れる。

周囲がざわめく。

「乱暴するな!」

取り囲んでいる群衆からは怒りの声が上がる。

「うるさい!口出しするな」

別の男が言った。

「これは怪しい者は取り締まれという葛山様の命や」

その一言で、場の空気は凍り付いた。

誰も、すぐには動けない。

権太が低く言う。

「出たな」

朔太郎は、倒れている男を見ていた。

血がにじみ、呼吸が浅い。

このままでは危ない。

玄之助が言う。

「これが虎の差配か」

静かだったが、はっきりしていた。

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その声に、男たちが顔を向ける。

「何や、お前ら」

目つきが変わる。

敵を見る目だった。

群衆からも声が沸き起こった。

「合議にかけるべきや」

周囲が頷く。

それが、この国のやり方だった。

だが、返ってきたのは笑いだった。

「合議やと?」

嘲るように言う。

「そんなもん、今の統領様には関係ない。」

「わしらは何をやっても良いと言われて来とるんや」

その言葉は、これまでの伊賀にはなかった。

風が強く吹いた。

木の葉が鳴る。

誰もが感じていた。

何かが変わっている。

いや、変えられている。

地に伏していた男が、かすかに動いた。

まだ生きている。

朔太郎は、一歩前に出た。

今度は、玄之助も止めなかった。

「そこまでや」

短く言う。

場が、ぴたりと止まった。