鬼を狩る子孫 第二部・過去編 第四章 伊賀(6)
外の者か?
伊賀の谷は、その日も静かに見えた。
山に囲まれ、
風はゆるやかに流れ、
人はそれぞれの仕事に戻っている。
だが、その静けさの中に、
不穏なものが混じっていた。
悲鳴が上がったのは、昼前だった。
「ひえ~」
悲鳴が谷に響く。
朔太郎たちが振り向いたときには、
すでに人が集まり始めていた。
権太が言う。
「行くぞ」
三人は駆けた。
細い道の脇、
木立の影に、数人の男が立っていた。
その中心で、百姓が一人地に伏している。
その背に、男たちの棒が振り下ろされた。
鈍い音がする。

「やめんか!」
誰かが叫ぶ。
だが、振るう手は止まらない。
朔太郎が割って入ろうとした。
その腕を、玄之助がつかむ。
「待て」
低い声だった。
「見ろ」
打っている男たちは、服装も、言葉も、
この地のものだ。
ただ一つ違うのは――
容赦ない振る舞いだった。
遠慮がない。
加減がない。
「外から入り込んだ者や」
男の一人が言った。
「道を探っとった」
倒れている百姓を蹴る。
「吐け」
返事はない。
すでに意識がないのかもしれない。
人混みの中から、声が上がった。
「そいつ、違う」
場が、わずかに揺れる。


