鬼を狩る子孫 第十二話 大江山(10)
再会
福知山の町は、思っていたよりも静かだった。
駅前の賑わいを少し離れると、空が広く、風が素直に抜けていく。
嵐山は歩きながら、何度か空を見上げた。
「……山が近いな」
「京都とは、
また違いますね」
悠夜が言う。
「せやな。
ここは “山の入口” や」
嵐山の声は、どこか懐かしさを帯びていた。
ほどなくして、一行は建物の前に立った。
日本の鬼の交流博物館
「……えらい名前やな」
蓮が率直に言う。
「軽く言うたら、
鬼の総合案内所や」
嵐山は笑った。
中に入ると、展示室へ続く廊下の途中で、男がこちらに気づいた。
一瞬、視線が止まり――
次の瞬間、表情がほどける。

「……まさかと思たけど」
「その “まさか” や」
嵐山が答える。
「久しぶりやな」
「ほんまに」
学芸員は嵐山を見て、首をかしげた。
「変わってへん……
いや、
ちょっと横に育ったか」
「第一声がそれかい」
二人は顔を見合わせ、笑った。
「紹介するわ。
こっちは生徒さん」
悠夜たちが軽く会釈する。
「今日はな、
挨拶だけのつもりやったんやけど」
嵐山が言うと、学芸員は首を振った。
「いやいや。
せっかく来たんや」
そう言って、展示室の方を親指で示す。
「時間はあるやろ」
「今日は福知山泊や」
嵐山が答える。
「明日、山登って次の日、
亀岡から保津川下りで帰る予定や」
「……詰め込むなあ」
学芸員は呆れたように笑う。
「相変わらずや」
「昔からやろ」
「せやったな」
一瞬、二人の間に、学生時代の空気が戻る。
「ほな」
学芸員が言った。
「今日はまず、
“鬼がどう語られてきたか” からやな」
「酒呑童子やろ?」
「その “酒呑童子” が、
いつ、どこで、
どういう話として固まったか」
悠夜たちは、自然と背筋を伸ばしていた。
「山の話は、
明日、実際に歩いてからの方がええ」
「せやな」
嵐山はうなずく。
「今日はまず、
頭の中の “鬼” を整理せなあかん」
学芸員は展示室の扉に手をかけた。
「じゃあ、
続きは中で」
扉の向こうには、絵巻と年表、そして静かな照明。
鬼は、
まだ暴れていない。

