京大俳句会(14)-第177回(令和5年11月)-
「京大俳句会」は大正9年2月に、三高生や京大生によって創設された「京大三高俳句会」をルーツとする俳句団体です。京大学生集会所で行われた2月23日の発起大会の3か月後の5月10日には、再び虚子を招いて円山公園の ”あけぼの楼” で大会を催しています。この時の様子は、高浜赤柿という人が、大正9年6月の「ホトトギス」に寄稿しています。赤柿氏は三高生であった日野草城よりも2歳年上で、当時は京大の2回生、京大側での世話役を務めていました。
京大三高俳句会は、前年に草城や赤柿によって創られていた「神陵俳句会」がスライドしてできたものです。神陵という名称ですが、東京の第一高等学校(一高)が向ヶ丘にあることから「向陵」を称したのに対し、三高は神楽岡(吉田山)の麓にあることから「神陵」を称したものです。吉田山には吉田神社があり、節分の日は大賑わいしています。徒然草を書いた吉田兼好はこの神社の神官の出身です。
第177回京大俳句会作品集
兼題 :「御火焚(おひたき)」及び傍題
御火焚とは、旧暦11月または12月に京都を中心にした近畿地方の神社で行われる火を焚く祭のことです。例句として次のようなものがあります。
御火焚や霜うつくしき京の町 蕪村
お火焚の幣燃えながら揚りけり 鈴鹿野風呂
お火焚やあたり更けゆく杉檜 佐藤紅緑
貴船なるお火焚まつり見て来たり 大橋櫻坡子
御火焚の切火たばしりたまひけり 後藤夜半
1 秋や来るあっという間の期待去る 二宮
2 炎熱のあとの極寒一入に 嵐麿
3 御火焚に愚かを焚べるサピエンス 二宮
4 御火焚きや煙舞来て目に泪 のんき
5 御火焚やこれの忌火を鑚り燻べ 吟
6 御火焚や夫の横顔僧のごと 蒼草
7 お火焚や貴船を揺らす龍の笛 游々子
8 神の杜揺らす御火焚小夜の色 つよし
9 神無月神が留守なら自立せよ のんき
10 桔梗(きちこう)やガラスにすこし罅の入る 吟
11 際やかにお火焚昇る深空かな 遥香
12 しぐるゝや孤舟の真菰ぬらすほど 游々子
13 七五三草履の鈴も軽やかに つよし
14 神丘や野風呂の句碑の「け」に悩む 楽蜂
15 散りてなほ水面彩る紅葉かな 遥香
16 日本一、早速来期御火焚に 嵐麿
17 火焚祭十万本の串燃ゆる 楽蜂
18 まだ芯に残る反骨落葉風 蒼草