写真で見るプレバト俳句添削(48)ー2023春光戦Bブロック予選ー

Bブロックの出場者は、キスマイ千賀(名人8段)、中田喜子(名人7段)、皆藤愛子(名人4段)、本上まなみ(特待生5級)。的場浩司(特待生5級)の5人で、お題は ”引っ越し” です。

梅沢さん: 中田さんは実力ありますから。

ジュニア: 本上さん、テーマによってはあるんじゃないかと思いますね。

フジモン: 僕も本上さん、来るんじゃないかと。前に詠んだあのラムネの俳句でしたか、あれは(もの言わぬ従弟にサイダー渡す駅)ビシッとハートに響いたので、ああいう俳句詠まれると、1位もあるかな。

千賀さん: 普通にいったら、ここじゃないですか(会場笑い)

浜田さん: そやんな。あなたもう8段やもんね。

千賀さん: 8すよ、僕。


2位 キスマイ千賀 木の芽冷え青いジャバラで家具包む

木の芽冷えは、木の芽が出る頃の寒い気候をさす春の季語です。

木の芽

千賀さん: ジャバラっていうのは、引っ越しの時に荷物に掛ける青い布です。元々住んでたお家との別れの寂しさみたいなものを詠みました。

梅沢さん: 良い俳句ですよ。なんで2位なのか? 「家具包む」を「包む家具」にすると1位になると、私は思いますよ。私ごときの意見でどういったことないんでしょうけど(会場笑い)。

夏井さん: 「木の芽冷え」という季語を選んでいますよね。似たような季語で「木の芽晴れ」というのがありますが、「木の芽冷え」を選んでいることは、寂しさや不安に軸足を置きたいと、それはあなたの意図通りですね。しかも、”冷える感じ” と ”青” が響き合いますね。こうして展開してきた時に下五です。おっちゃんは流石ですね。おっちゃんは人の句は完璧に分かるようになってる。逆ですね、

添削 木の芽冷え青いジャバラで包む家具

ってやると、物が最後に映像として残る訳ですね。そして季語がもっと映えるんです。「包んだ家具」を「冷え」がもうひとつ包む仕掛けになるんです。惜しかったよね。

游々子: 下五は概ね動詞ではなく、名詞止めにした方が、良い句となります。フォーカスするものの違いであるのですが、本句では明らかに「包む」という行為ではなく、「家具」という物にフォーカスすべきです。映像性でいえば、動詞より名詞の方が強いことは自明です。季語については、私は「木の芽晴れ」であっても良いと思います。その場合は、内容の全く異なる句となり、引っ越し後の新生活に希望を見る、ということになります。私はこの方が好きです。「木の芽晴れ青いジャバラで包む家具」

青空

青空と響き合います。


3位 本上まなみ 新しき庭あたらしき泥の春

泥水

本上さん: 引っ越してきた新しい家の庭を見ていたら、春の日差しに照らされて地面が温もっている、その様子に色んなものがこれから芽吹いてきて、豊かに繁っていくんだろうなというワクワクした気持ちを込めて作りました。

夏井さん: 作品としてはそつなく出来ているんです。しかも心遣いも効いております。上五は漢字、中七はひらがな、リフレインを活かして表記にも気を使っている。「春の泥」でなく「泥の春」にして、春という季節の方に軸足を移して、表現したいことはキチンと出来ています。悩ましいのは、順位をつけるとなった時に、もうちょっと具体性・独自性を出せる余白がある。何かやれるとしたら中七にあるんです。「新しき庭」というだけで、この「泥の春」という季節は、新しいものであるということは、意味の上で分かるんです。ですからリフレインした目的・意図は分かるんだけど、ここに具体性を入れる。例えば、

添削 新しき庭赴任地は泥の春
   新しき庭脱サラの泥の春

作者の状況がもう少し入れられる余地があるということです。

游々子: 本上さんはリフレインに価値を置き過ぎましたね。リフレインすると確かにリズムは良くなるのですが、同じ言葉を使っている分、内容は希薄になってきます。私自身はリフレインには技巧臭を感じてしまい、必然性があるとき以外は使わないようにしています。


浜田さん: ここまで来ると中田さん、どうでしょうか?

中田さん: いや~もう本当に! 千田さんのお隣に座りたいです!

浜田さん: 皆藤さん、いかがですか?

皆藤さん: ええ~っ 中田さんに勝つなんて!


1位 皆藤愛子 春日向カーテンの到着は明日

カーテン

皆藤さん: よくやってしまう失敗なんですが、新居にカーテンが間に合わなくて、でもそれはその時だけの景色が見られるからいいかなとの句です。

ジュニア: 素晴らしいですね。なんかこう未来に向けての明るさみたいなんがあるし、誰が読んでも分かるし、素晴らしいと思います。

梅沢さん: 素晴らしい! 肩の力が抜けてて難しいこと考えずそのまま書いた句で、素晴らしい!

夏井さん: 「引っ越し」を使わず中七下五で引っ越しあるあるだなと思わせる、ここら辺上手かったですね。季語がちゃんと主役に立っているんです。カーテンが無いわけですから、「春日向」が季語というのも分かりますし、それからカーテンが来た時のカーテン越しの光とか風を想像させると。季語もテーマもしっかりと描けましたね。やっと皆藤さんらしい句が戻ってきたなと、今作者が分かりそう思いました。

游々子: 爽やかな好感の持てる佳句です。このような俳句を詠んでいきたいものです。

一方、中田さんは4位に沈んでしまいました。その句は「引越しの女房春泥をおお跨ぎ」というものですが、川柳のような句で、皆藤さんの句のような爽やかさに欠けています。最下位となった的場さんの句は「校舎裏抱きし犬の目春の月」というものですが、テーマの引っ越しとはほど遠く、しかも三段切れになっていて、論外です。