俳句上達のヒント(6)-取り合わせ句の作り方ー

以前テレビでアメリカの少年が、俳句というものは、全然関係ないものを2つ述べれば良いものだ、と喋っていたことがありました。彼は彼なりに、取り合わせの句というものを、方向の異なる長いベクトルと短いベクトルでもって平面の広がりを表現したものが俳句であると理解していたのですが、この捉え方は50点のもので、正しいものではありません。

一方、我が国で俳句を長くやっている人達は、大家といわれる俳人も含めて、”遠からず近からず” という表現で、取り合わせの句を説明しています。しかしこれも、初心者への教え方としては全く駄目なもので、教わる側は困惑するだけのものになってしまうでしょう。

これらの二つのバツ印を経て、私が辿り着いた結論は、5音の季語に対して残りの12音で、季語を引き立てるのが取り合わせの極意であるということです。ではどうやって引き立てるかということですが、それは与えられた兼題季語の特性が何であるかを把握したうえで、その特性に添った12音を創るという方法です。

兼題季語の例として、”日脚伸ぶ” を取り上げてみます。

日脚伸ぶ

これは冬の時候の季語で、角川の歳時記では、”昼の時間が少しずつ伸びて行くこと” と当り前の説明のあとに、”春が近づく喜びをともなう” と書かれています。ここが重要なところで、残りの12音では、”春が近づく喜び” に添ったことを述べると佳い句が出来るのです。2月の「しおさい会」で佳句だと思ったのは、

日脚伸ぶ友待つ砂場に高き山

という句です。勿論この句に問題点はいくつかあり、それは

添削(45)ーしおさい会 令和5年2月ー | 茅ヶ崎で俳句 (chigasaki-haiku.com)

に書いた通りですが、”高き山” がこの場合、季語を引き立てているのです。

角川歳時記に載っている例句で、季語を引き立てているものとして分かりやすいのは、

球蹴る子縄を回す子日脚伸ぶ

というのがあります。また意味深長で想像力を掻き立てる句として、

母に杖三本ありて日脚伸ぶ

というのがあります。三本の杖とはどういうものだろうかと、想像を掻き立てるのです。

最近の私の ”日脚伸ぶ” の句に、

日脚伸ぶ海道一の城下かな

というのがあります。この句は、暖かい日に誘われて、”海道一の弓取り” と称された今川義元の駿府(現静岡)を探訪したときのものです。”海道一” ということが、日脚伸ぶのイメージに添うかと思って作った句ですがどんなものでしょうか。

俳句的生活(210)ーどうする家康(2)ー | 茅ヶ崎で俳句 (chigasaki-haiku.com)