俳句的生活(243)-虚子の詠んだ京都(21)蕪村の寺ー

京都洛北一乗寺に金福寺(こんぷくじ)という臨済宗南禅寺派のお寺があります。少し北には詩仙堂があるという地区です。このお寺は蕪村の墓があるということで知られていて、また蕪村が再建した芭蕉庵が残されています。

蕪村の墓
金福寺の芭蕉庵
金福寺芭蕉庵

昭和10年5月2日、娘の立子を伴った虚子は、嵐山の後に金福寺を訪れ、句会を開いています。その時の出句は

徂(ゆ)く春や京を一目の墓どころ

というものです。桜は既に散っていて、さすがの虚子も花の句は詠めなかったようです。中句の ”京をひと目” とは、金福寺の標高が95mと高く、「紅もゆる」の石碑がある吉田山山頂とほぼ同じ高さで、金福寺からは、糺の森や御所までもが見渡せたのです。

金福寺からの眺め
金福寺からの ”京を一目” の眺め

”虚子が詠んだ京都” まだまだ沢山あるのですが、私の土地勘があるところは一応出尽くしましたので、次稿からは ”蕪村の詠んだ京都” というタイトルで京都の俳句旅を続けていこうと思っています。

時雨るるや雨の襖の詩仙堂  游々子