写真で見るプレバト俳句添削(17)-5月26日(2)ー

後半の特待生昇格試験です。今回は、千原ジュニアとキスマイ横尾という二人の名人9段の登場で、10段への昇格がなるかどうかの、注目の回です。

千原ジュニア  帰省して貼られたままの犬シール

犬シール

ジュニアさん: 飼ってた犬が亡くなった。でも玄関には犬のシールが貼られている。しばらくその状態が続いた。

梅沢さん: “帰省して” という普通の言葉で入っていくのは、10段を目指す人として、どうなんだろう?

夏井さん: この句のポイントは、”して” ”まま” の叙述の是非です。1ランク昇格。感情表現が上手く出来ている。まさに ”帰省して” が評価のポイント。定石は ”帰省せり” であるが、だらだらと続くこの言い方が、この場合、自分の心に適っている。オッチャンえらい。オッチャンは人の句のことはわかる!

游々子: ジュニアさんの句は、いつも自分の実体験を、そのまま平易に述べる生活句で、好感が持てます。10段での活躍が見ものです。”帰省” が夏の季語です。


キスマイ横尾  夕立晴モップのごと微睡(まどろ)む犬

まどろむ犬

横尾さん: 自分は犬の専門誌をやっているので、任してほしい。散歩に行けなかったワンチャンの待ってる姿が、モップに見えた。

梅沢さん: なんで五七五にしないのか。

夏井さん: ”ごと” の是非。あいまいで、現状維持。モップのような犬なのか、モップのように微睡んでいるのか、ちょっとわかりにくい。中七を、”モップのような” とすると、犬の様子になり、”モップのように” とすると、モップのように微睡んでいることになる。こういうところまで、俳句は表現できる。”ごと” で胡麻化してはいけない。中七を守って下五を字余りにした方が、よっぽど得です。

横尾さん: 読者に解釈をゆだねる高級テクニックを使ったのですが。

夏井さん: そんな高級な句ではありません。

游々子: ”ごと” で比喩するのは、あまりにも簡便すぎて、俳句としては正道ではない、という考えを私は持っています。うまく表現できないときに、ついつい使ってしまう落とし穴です。”ような” も ”ように” も同じことです。中句を中七にするのであれば、”如く” にすれば良いだけのことで、本質はそんなことではありません。残念ながら、ダブル10段昇格はなりませんでした。


梅沢富美男  まろび来る仔犬に夏の陽の香り

じゃれる犬

梅沢さん: 家に帰ると、自分の帰宅を待っていたように、仔犬が飛びついてくる。抱き上げると、藁のようないい香りがしてくる。

夏井さん: ボツ、どっちなの! ”まろび来る” はうまい、いかにも仔犬ですね。そこに陽の匂い。夏の強烈な匂い? 気持ちのいい温かみ? 汗? あいまいです。藁を書きゃあいいんですよ。

添削句 まろび来る仔犬は夏の藁の香よ

夏井さん: こうすると具体的な匂いがしてきます。

游々子: いいところを突いていますが、添削はダメです。下五の ”よ” が強すぎる詠嘆です。そもそも、季語の ”夏” のイメージに幅があり過ぎるところから発生している曖昧さなので、季語に工夫をこらすべきです。私なら、「まろび来るポチに小夏の陽の香り」と致します。