写真で見るプレバト俳句添削(16)ー5月26日(1)ー
浜田さんが2週ほど自宅待機となり、今回、晴れて復帰となりました。5月19日は、梅沢さんが、代理MCを務めましたが、あまりの下手さにスキップすることにしました。改めてこの番組は、浜田さんで持っていると認識しました。
番組前半の出場者は、的場浩司、小池美波、三田寛子、蛙亭イワクラ、の4人です。的場さんがこの番組で詠んだ句、”職質をするもされるも着膨れて” が、ナツメ社発行の、「よくわかる俳句歳時記」に、例句として掲載されたことが、紹介されていました。
今日のお題は、”待て” というもので、飼い犬を訓練する場面です。
原句 五月晴肉球あつし初散歩 小池美波 凡人2位 50点
小池さん: 犬を飼い始めての初めての散歩が5月だった。梅雨の晴れ間の気温が高いときで、犬の足の肉球が熱かった。
梅沢さん: 3段がプツプツと切れている。
横尾さん: ”あつし” が、厚いのか熱いのかがわからない。
夏井さん: 二人の指摘は当たっている。句またがりの技法で、調べを良くすることができます。
添削 肉球のあつし5月晴れの散歩
夏井さん: いろんな型を覚えてくると、あなたは出来るようになる。
小池さん: 夏井先生にそう言っていただけると、メチャクチャ嬉しい、大好きなので、エヘッ♡
浜田さん: エヘッやあらへん!
游々子: 先ず3段切れについてですが、これは中七を、”あつし” と終止形にしたことで起きているので、”あつき” と初散歩に掛かる連体形にすることで、解消できます。最大の問題点は、季語の、”五月晴” です。旧暦と新暦との関係における問題点ですが、新暦で暮らしている我々現代人にとっては、五月晴のイメージは、圧倒的に初夏の爽やかな天気であり、旧暦での梅雨の晴れ間を思い浮かべる人は皆無です。ここが同じ五月の入った季語の、”五月雨(さみだれ)”との違いで、五月雨は芭蕉の名句によって、現代人にも、梅雨時の雨であると理解されています。俳句の世界では、旧暦をベースとし、五月晴れも長らく季語として生き続けてきましたが、同じ意味の季語で、”梅雨晴れ間” というのがありますので、そろそろ、”五月晴” という季語は廃止し、”梅雨晴れ間” を使っていくべきでしょう。俳句の常識は世間の非常識、といわれていることを、俳句をたしなむ人は、肝に銘ずべきです。私であれば、「梅雨晴れ間肉球あつき初散歩」と致します。
原句 初口上頭垂れ見る若楓 三田寛子 才能無し最下位 30点
三田さん: 子供の初口上の時、自分の番がくるまで、手を三角にしてついて頭を垂れてそれを見ている。散歩のとき若楓をみると、それを思い出す。
夏井さん: この句は、書きたかったことが、書けた気になっているタイプの才能無しです。問題は中七、誰の動作か判りにくくなっている、これが諸悪の根源。かわいい小さな手を若楓に例えたかった、わかるわけないでしょう!
添削 若楓初口上の健気な手
夏井さん: 俳句って、具体的な映像をどれだけ描写できるかにかかっています。
三田さん: 勉強になります~
游々子: 三田さんが詠みたかったのは、我が子に課したきつい訓練の日々だったと思うのですが、俳句ではそれを映像化できなかったということでしょう。それは短歌に向いているモチーフだと思います。
原句 ソーダ水結露が染みる珪藻土 蛙亭イワクラ 才能無し3位 35点
イワクラさん: 子犬に、”待て” の躾をしている間に、お母さんが持ってきたソーダ水が、珪藻土で出来たコースターに結露していた。
横尾さん: コースターの結露の時間経過を言ってるだけじゃん!
夏井さん: この句は、自分で表現したいことが、自分でよく分からないタイプの才能無しです。
添削 待てできぬ仔犬とソーダ水の結露
游々子: この添削からは、俳句の限界、弱点というものを垣間見る思いがします。一見、俳句らしく見えますが、仔犬とソーダ水の結露に何の関係があるのか、ということです。アメリカの少年が、俳句とは、全然関係のないものを二つ並べれば良いのだ、と言っていましたが、この添削句は、まさにそれを地で行ったようなものです。
原句 老犬や腹見せ眠る薄暑光 的場浩司 才能有り1位 70点
的場さん: 経験をそのまま句にしました。
夏井さん: よく勉強してますね。そして、ちょっと難しい型に挑戦している。上五に季語でないものをもってきて、それに ”や” をつける型は、言葉のバランスが取り難いので、ちょっと難しい型です。それを無難にこなしている。特待生を目指すためのアドバイスを一つして良いですか? 中七の、”見せ眠る” に工夫の余地があります。原句は、ユーモラスな感じがあって、これで良いのですが、弱ってきている衰えた老犬なら、
添削 老犬は眠る薄暑の腹さらし
夏井さん: これが俳句というものです。これが出来るようになると、特待生に定着出来ますよ。
游々子: 添削句からは熟練の技を感じますが、私はユーモラス感のある原句の方を好みます。