添削(13)ーH.Tさん しおさい会(3月)ー

原句 水温む鏡の中の今朝の顔

朝おきて鏡を見たら、いつもとは違う顔が映っていた、それは水温む季節になっていたから、という句意で、とても良い句です。「水温む鏡に映る春の顔」とすることも考えられますが、原句の方が、今朝それを気付いた、というニュアンスがあり、直す必要はありません。

(注)本句は、添削者二人を含む三人が特選とする優秀句となりました。


原句 初蝶や足にまとわる風の道

この句の問題点は、足にまとわっているのが蝶なのか風なのかが、不明であることです。蝶だとすると、上五を「や」で切っていながら、中七で更に蝶のことを続けるという不合理さがあります。風だとすると、”足にまとわる風の”と、10音も使って最後の「道」を修飾していることになって、俳句的に問題です。上五を「や」で切らず、「の」にし、「初蝶の足にまとわる風の道」とすれば、中七の終止形で一旦切れて、下五は別のカットとなり、俳句として成立します。

参考例 初蝶に足元とられ廻り道


原句 活け替えて瀬戸の花びんに春の水

この句の問題点は、上五と中七に、「て」と「に」という二つの助詞が使われていることです。そのことによって、句が説明文のようになってしまいます。下五の「春の水」に集中して、少しでも“深み”がでるように工夫すべきでしょう。

参考例 切り花を癒すが如し春の水