写真で見るプレバト俳句添削(39)ー(8月25日#1)-

今回のお題は「駅の売店」です。

駅の売店、プレバト俳句添削

櫻坂46小池

色褪せしフリーペーパー秋浅し  才能有り 70点

フリーペーパー、プレバト俳句添削

小池さん: 売店の中にあるチラシが、夏の話題のもので、色落ちとか文字が消えているのを見て、秋が近づいている寂しさを感じながら作ってみました。

ジュニア: メチャクチャ良い。色褪せしで夏が終わっている感じがすごく表されているし、”色褪せし” と ”秋浅し” で韻を踏んでいる。非常に音感が良い。

夏井さん: きっちり基本の形を勉強しているのが分かりますよね。上五中七で1フレーズ作って、”秋浅し” という5音の季語を持って来る、これが取り合わせの基本です。”秋浅し” というのは時候の季語で、これ自体は映像を持っていないんです。ですから必ずこっちのフレーズの方に明確な映像・音が必要なんです。フリーペーパーを持ってきたのも上手かったと思いますね。置かれている店頭・店先とかフリーペーパーの向こうに場所も見えてくる。更に上五の ”色褪せし” の描写も良かった。”色褪せし” によって、”秋浅し” が出て来た瞬間に、夏が終っての ”色褪せし” であることが手に取るように分かる訳ですね。ちゃんと勉強するときちんと実るんです。直しは要りません。

小池さん: 毎日勉強してて、夜中の2時ぐらいまで、ずっと色んな季語を調べたりして、本当に嬉しいです。

游々子: この句は、取り合わせの句の中でも、基本中の基本のパターンです。5音の季語を下五に持ってきて、前の12音で季語を引き立たせる描写をするパターンです。”色褪せし” も単に ”秋浅し” と韻を踏むということでなく、”秋浅し” を引き立てるために使われたものです。1週間程前の私のブログ「大山灯籠」での掲句 ”街道に点す灯や夏の宵” もこのパターンを意識して作ったもので、前半の上五中七は、”夏の宵” の描写として持って来たものです。

灯の点いた大山灯籠、プレバト俳句添削


本上まなみ

もの言わぬ従弟にサイダー渡す駅  才能有り 72点

サイダー、プレバト俳句添削

本上さん: 久し振りに会った従弟にバイバイをするため、いっしょに駅へ行きまして、そしてサイダーを買ってあげた。でも彼はじっと黙って何も言わず受け取るんですね。元々照れ屋なんだけど、それだけじゃなくて、一人で帰っていくことに対して緊張しているのかなと。

中田さん: この ”もの言わぬ従弟” がすっごくいいですよね。従弟さんのイメージがすごく膨らみますもんね。とてもいい句だと思います。

ジュニア: メチャクチャいいです、これは。最近読んだ俳句の中でかなり良いですね。サイダーじゃないとダメです、これは。サイダーという季語がメチャクチャ立ってて素晴らしいと思います。

夏井さん: これはとてもいい句だったと思います。注意して見てほしいんですが、季語というのが中七のこの位置に入っているんです。上手になってくると季語を色んなところに置く力がついてくる。必要な情報がきっちり入っていますね。更にこの従弟というのはひょっとして思春期の従弟ではないか、照れたり素直になれなかったり、そういう年齢まで思い浮かぶ。となるとサイダーを渡した人物は従弟のお姉ちゃんかな? ちょっと年上の。そうなると淡い恋心・憧れみたいなのがサイダーという季語の向こう側に見えてくる、もうひとつの物語が17音で入っている。俳句というものはここまで出来るんです!

游々子: 季語を引き立たせるという使い方とは別の季語の使い方です。普通、初心者はこうした季語の使い方になります。この句の中心は、中田さんも指摘しているように、”もの言わぬ” にあって、季語サイダーは脇役です。俳句は何もすべて季語を中心にする必要はなく、こうした使い方でも素晴らしい句が出来るという実例です。夏井さんの推測についてですが、この句から従弟の年齢が推測できるのは当り前のことであって、わざわざそれを取り上げているのは、蛇足でしかありません。そしてそれ以上のことを推測している夏井さんの推測内容は通俗的で、私は好きではありません。