添削(39)ーしおさい会 令和4年11月ー

兼題: 小春、大根、当季雑詠

昼下がり小春日のベンチ

浅井遊助さん

原句 小春日や夕焼の富士とウオーキング

小春日に、夕焼けの富士を見ながらウオーキングしたということですが、そのままの表現になっています。ウオーキングを削り、「小春日や○○○○○〇〇大夕焼」という句構造にして、中七に富士を入れた措辞を考えるのが良いでしょう。

参考例 小春日や富士を包みぬ大夕焼


原句 大根は煮ても焼いても役者だね

着地が崩しすぎです。

参考例 大根は煮ても焼いても大役者


原句 冬来る響くゴスペル駅ひろば

ゴスペル聖歌隊

情景の見える佳句です。下五、「駅ひろば」でも良いのですが、「大広場」とした方が、ゴスペルの響きが生きてくると思います。

参考例 冬来るゴスペル響く大広場

参考例3句とも、下五に「大」を使うことになりました。


杉田ひとみさん

原句 小春日や今日限りの衣替え

「衣替え」を「今日限りの」というのはおかしいですね。「今日を限りの」を使うのであれば、夏物とか秋物の服でないといけません。また、「衣替え」は「更衣」と同じで初夏の季語です。秋の衣替えは「後の更衣」が季語となっています。

参考例 小春日や今日を限りのワンピース


原句 大根やおろしにツマに汁煮もの

大根は何にでも使えて重宝できますね。

参考例 捨てるとこ無き大根の馳走かな


原句 銀杏道愛する人と手を組んで

銀杏道

恋の句はいいですね。下五を名詞にするため、語順を代えてみました。

参考例 愛し合ふ人と腕組む銀杏道


伊藤美恵子さん

原句: 頬杖し背中にぬくき小春日や

「や」は、句を途中で切る切れ字で、下五に持ってきても意味がありません。下五で詠嘆するのであれば「かな」を使います。

参考例 頬杖し背中にぬくき小春かな


原句 大根のみそ汁煮物漬物よ

大根ステーキ

前の杉田さんと同じように、大根料理を並べた句ですね。大根がしばらくの間、冷蔵庫に保管されていることを詠んではどうでしょうか。写真は大根ステーキです。

参考例 大根は葉こそ主役の冷蔵庫


原句 冬はじめ昏れゆく街の長き影 

冬はじめに影が長くなるのは、当たり前のことです。

参考例 冬はじめ影が影追ふ日暮れかな


多田明子さん

原句 小春日やテラス華めく昼下がり

「華めく」が説明語となっています。華めいている状況を詠むのが俳句です。シャンペンでランチパーティしている光景にしてみました。

参考例 小春日やぽんと弾けるコルク栓


原句 漁終えし鰤大根に祝い唄

鰤大根ご飯

漁を終えて、港に戻った漁師たちが鰤大根で朝餉の酒を飲んだ、という光景がありありと描かれています。ただ時間経過に沿いすぎていますので、それを断ち切る工夫をしてみます。

参考例 漁終えて浜に灯点す鰤大根


原句 海の碧なほ冴え渡り冬来る

上五中七が、下五に対して、原因―>結果の順になっています。語順を代えてそれを解消し、海の碧を具体的地名を出して表現します。

参考例 冬来る伊豆湘南の碧き海