添削(33)ー厚木若鮎会(令和4年8月)ー

原句 電線を五線譜にして夏燕
中句の、”にして” が句を緩んだものにしています。
参考例 五線譜の如き電線夏燕

原句 初なりの青柿数へて空近く
中句の、”数へて” が句を緩んだものにしています。
参考例 初なりの青柿空に近くあり

原句 免許やめ夏バス通が新厚木
今夏から免許返上して、バスの利用者になったことを詠嘆するのが良いでしょう。
参考例 免許やめバス通となる今夏かな

原句 あぶらぜみ幼児も泣き夕餉かな
中句の、”泣く” を蝉の鳴き声に掛けたものと思いますが、蝉の鳴き声が昼寝の幼児を目覚めさせた、と詠むのが良いと思います。
参考例 あぶらぜみ幼児目覚める日暮れかな

原句 川面ゆく風に吹かれて揚げ花火
揚げ花火を、風の吹く心地良い川で眺めた、ということですが、焦点が二つになっているので、花火に絞って詠むのが良いです。
参考例 大花火河口を跨ぎ散りにけり

原句 山すそに雲たち込めぬ梅雨あがり
中七と下五が矛盾しています。
参考例 梅雨明けや山裳の雲の白きこと

原句 星渡る声出し祈る三嶋の森 
”星渡る” は ”星流る” のことでしょうか。動詞の数を減らすために、季語を「流星」とします。
参考例 流星や声出し祈る三嶋の森

原句 帰省して「ちゃん」づけ呼びの八十路かな
佳句です。直すところはありません。

原句 放し飼いの卵ぷっくり今朝の秋
佳句です。直すところはありません。

原句 吹く風の秋の気配の一人酒
中七を、”や” で切った方が良いでしょう。
参考例 吹く風に秋の気配や一人酒