写真で見るプレバト俳句添削(19)-6月2日(2)ー

後半は、1ランク上の査定です。今回の出場者は、特待生3級のキスマイ北山、名人10段のフルーツポンチ村上、永世名人の梅沢富美男の3人です。

原句 浮葉の雫止めるシャッターボタン  キスマイ北山

蓮の葉の水

北山さんは、昨年11月から昇格なしが続いています。浮葉とは水面に浮かぶハスの葉のことで、夏の季語となっています。

北山さん: 雨が降ってハスの葉に溜まった水が、雫となって流れだす、それを止めるには、写真に撮れば良いと思った。

夏井さん: この句のポイントは、中七の「止める」の是非です。現状維持! あと少しの臨場感を!
やろうとしている事は、とてもよく分かりますね。分かるんだけど、写真を撮ることで時間を止めるという発想は、詩歌の世界ではかなりあり、”止める” が陳腐になっています。

添削 シャッターボタン浮葉の雫ふくらみ来

雫がふくらんで来る! 俺はこれからシャッターボタンを押すよ、で時間は止まります。これが俳句での時間の止め方です!

游々子: ”ふくらみ来” は流石の措辞ですが、上句はリズムがしっくりきません。”写真機や” にしてみてはどうでしょうか。「写真機や浮葉の雫ふくらみ来」


原句 夕立や楽譜にカンマ書き入れる  フルーツポンチ村上

楽譜

村上さんは名人10段で、現在永世名人に王手を掛けています。カンマとは、演奏の息継ぎや休止を表す記号です。

村上さん: カンマを書き入れる静けさと、外の夕立ちの音との取り合わせがいいのではないかと。

梅沢さん: そんなチマチマチマしたことを! カンマなんて世の人達が分かってる?
浜田さん: 新妻さん分かる?
新妻さん: commaですね、はい。
梅沢さん: ほら発音が悪いんだバカヤロー。降格、降格!

夏井さん: この句のポイントは、楽譜にカンマを書き入れる行為と、季語「夕立」がどう響き合うかの是非です。

浜田さん: 一つ前進、永世名人おめでとうございます。先生から、”季語の力を信じている”。

夏井さん: 作曲家がカンマを書き入れている時は、作曲家の脳内には音楽が溢れているはずです。この行為に対して、夕立の気配が押し寄せてくる訳ですよ。指先に夕立の力が及んでいくような、そんな感触すらあります。更に、「か音」をつないでいる、隠している技もちゃんと評価します。

村上さん: 見つかっちゃったよ。

游々子: この句で、プロの作曲家を想定しているとは、思いも寄らなかったです。


原句 まず眼鏡次に手のひらすぐ夕立  梅沢富美男

眼鏡

梅沢さんは句集発行まで、あと6句です。

浜田さん: ボツ! 説明がくどい。

夏井さん: 気付いていくリアリティはとても良いですね。何がもったいないかというと、”まず” ”次に” ”すぐ”、 これだけ音数が必要? もう少し臨場感を増やすことができます。

添削 まず眼鏡おでこ手の平あら夕立

夏井さん: こうすれば臨場感がスプーン一杯分ぐらい増えます。

梅沢さん: そんなのは微妙な差じゃねーか。
夏井さん: 聞き捨てならんですよ。俳句は17音しかないんですから、ちょっとした差に命をかける、これが俳句でしょうが。

梅沢さん、靴を脱ぐ。

夏井さん: 早く靴履け、ほんとにもう!

浜田さん、靴を蹴飛ばす。

梅沢さん: (村上さんに)これからお前もこれを味わうんだぞ!

游々子: 添削の下五には、確かに臨場感はありますが、”あら” という表現が、現代短歌のようなものになって、伝統詩歌である俳句の表現には、そぐわない感じが致します。