添削(28)ーJ.Hさん しおさい会(7月)ー
原句 紫陽花に我が身を映し慈しむ
中七以下が、ストレートな感情表現となっていて、短歌だとこれで良いのですが、俳句では避けなければいけないものです。その理由は、俳句はより短い詩型であるため、”余韻” や ”余白” でもって作者の感情を表現しないと、”詩” にならないからです。具体的に映像を持たせて詠むことが、こうした場合の鉄則です。切り花にした紫陽花に、毎日丁寧に水を替えていることで、慈しんでいることを表現してみました。
参考例 床の間の紫陽花けふの井戸の水
動詞を省き、名詞だけで映像化してみました。中句の途中でカットが切り替わる、いわゆる句またがりの型の句です。
原句 鯵さばく子の指先に考(ちち)を見る
前句同様に、下五が具体性のない、感傷的表現になっています。このような句では、さばく指を映像化すると、深みのある句になります。
参考例 鯵さばく小指の使い父と吾子
原句 昼寝起き急かす孫とでこ打(ぶ)つけ
中句の、”急かす” は ”せかす” で6音となっています。
参考例 昼寝しておでこぶつける孫と我