添削(27)ーT.Sさん しおさい会(7月)ー

原句 紫陽花や本は書棚に色褪せり

紫陽花から、色褪せた本につなげたのは良いと思います。ただ、書棚は本に近すぎるのと、書棚の本が色褪せるというだけでは、面白味がありません。本を ”資本論” とし、色褪せたものが、本だけではないことを示俊してみては如何でしょうか。

参考例 紫陽花や色褪せし我が資本論


原句 鯵焼けば遠く母より長電話

鯵を焼いたとき、遠方に住む母から電話があった、昔、母が焼いてくれた鯵の香りを思い出す、という句で、とても良いと思います。ただ、中句の ”遠く” は副詞で、それが直接、母に掛かっていることが、文法的に気になります。”遠く” は この場合、”遠方の” ということで、意味は通じますが、文法的に違和感がありますので、それを無くす工夫をした方が良いと思います。

参考例 鯵焼けば島の母より長電話


原句 慰みの手紙進まず初蛍

友の訃報に接し、残された人に手紙を書こうとするのだが、なかなか筆が進まないという句で、蛍との取り合わせも絶妙で、良い句だと思います。ただ、上五の、”慰み” は、もて遊び、楽しみ の意味なので、”慰め” でなければなりません。

参考例 慰めの手紙進まず初蛍