俳句的生活(162)ー河童徳利ー

間門川(小出川)に架かる大曲橋の袂に、河童徳利伝説の発祥の地という案内板が立てられています(添付1)。三百年前の昔、西久保の五良兵衛さんが、助けてやった河童からお礼に貰った徳利が魔法の徳利で、底をたたかなければ、永久に酒が出続けるというものです。この伝説が特異なのは、五良兵衛さんの子孫の小室家(円蔵)にこの徳利が伝わっていたということです。小室家の菩提寺である円蔵の輪光寺には、河童が二匹、お湯に漬かっている像が、本堂の前に置かれています(添付2)。

昭和27年4月10日、飯田九一をリーダーとする「大山古道を探る」吟行の一行は、長福寺で昼食した後、大曲橋を渡っています。次の句は、九一がその時に詠んだものです。昭和42年に石碑が作られ、輪光寺に置かれています(添付3)。

うたかたを川の精霊に獺祭   九一

獺(ダツ)はカワウソのことで、獺祭(ダッサイ)だけだと春の季語、獺祭忌となると、正岡子規の忌日となり、秋の季語となります。九一の元句は、中句が8音で下句が4音の、リズム的に問題のある構成になっています。獺祭は訓読みでは、ヲソマツリと読めます。次のようにすると座りが良いものになりますが、如何でしょうか? 「うたかたを瀬の精霊に獺祭(をそまつり)」。

この石碑の裏面には、吟行のメンバーの一人であった鶴田栄太郎が、撰文を書いています(添付4)。この碑は、徳利が60年ぶりに茅ヶ崎に戻ってきたことを記念して建てたもので、県下においても極めて異色ある存在となるであろう、としています。

獺祭というと、2014年にオバマ大統領が来日したとき、安部首相がプレゼントした山口の酒として、一躍有名ブランドとなりました。オバマ大統領は、次のような俳句を詠んでいます。

Spring, green, and friendship
United States and Japan
Nagoyaka ni

日本語に直すと、「春みどり日米きずな和やかに」 となるでしょうか。

伝説の川に傾ぐる菫かな

河童徳利案内板
添付1
河童
添付2
飯田九一河童の句碑
添付3
河童徳利の碑
添付4