俳句的生活(92)-歌舞伎ー

歌舞伎「白波五人男」の浜松屋のプロットは、実にうまく出来てます。浜松屋に言いがかりをつけて、百両をゆする美貌の武家娘に変装した弁天小僧と、供侍になっている南郷力丸、二人の正体を見破った侍が、本当は二人の頭領の日本駄右衛門で、油断をさせて大金を強奪しようという筋書きです。「浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の、種は尽きねえ七里ガ浜、、以前を言やあ江ノ島で、年季勤めの稚児が淵、、、」と七五調で、弁天小僧が桜の彫物を見せて切る啖呵は、歌舞伎屈指の名場面といってよいでしょう。

次の場面、5人の賊が勢ぞろいした処で、南郷力丸も、「さてどんじりに控えしは、潮風荒き小ゆるぎの、磯馴(そなれ)の松の曲がりなり、人となったる浜そだち、、念仏嫌えな南郷力丸」と、こちらも七五調で見得を切ります。能もそうですが、歌舞伎で音声となった七五調は、なんとも日本人には心地よいものです。

小ゆるぎという地名には引っ掛かりますが、この南郷力丸、茅ヶ崎南湖の生まれという話があります。南湖の西運寺に力丸を祀った石碑がありますが、今でもお詣りに来る人が居るらしく、毎年卒塔婆が置かれています。この石碑は、大正7年に、木村留五郎という人が建てたもので、西運寺に移される前は、現在スーパーイヌヰとなっているところに置かれていたそうです。力丸は木村家の祖先だったという話もあるそうですが、南湖の正式の郷土誌では、力丸についての記述は一切ありません。

駅前のエメロード通りに、水澤酒店という創業90年以上となる老舗があります。この酒店の店頭に、「南郷力丸」という水澤ブランドの米焼酎が展示されているので、一本買ってみました。店主の水澤さんのお話では、水澤酒店が岡山の蒸留所に委託生産して貰っているもので、世界中、ここだけで販売されているものだそうです。2004年と2005年には、北米での品評会でグランプリになったものだそうで、店頭にはそのチラシも置かれていました。

浜松屋桜にからむ緋縮緬

南郷力丸石碑
西運寺の南郷力丸の石碑
南郷力丸の焼酎
焼酎の説明