添削(16)ーH.Tさん しおさい会(4月)ー
原句 初声(うぶごえ)や産まれし吾子の青き踏む
字句どおりに解釈すると、産まれたばかりの子が踏青することになって、有り得ないことですので、踏青するのは、吾子が誕生した時の自分(男)、または、ある程度成長した吾子として、参考例にあげました。
参考例1 東雲に産まれし吾子や青き踏む
参考例2 多摩川をよちよち吾子の青き踏む
原句 鳥帰る一羽残れし中洲かな
鳥の群れは飛び立ってしまったが、どういう訳か、一羽だけ中洲に残っている、という句で、詩情があります。中句を過去形にするのではなく、現在形にした方が、眼前の景が見えてくると思います。
参考例 鳥帰る一羽の残る中洲かな
原句 先ず白に始まる椿朱に終る
椿の赤と白というと、真っ先に、河東碧梧桐の、”赤い椿白い椿と落ちにけり” を連想します。子規や虚子のこの句の解釈は、地面に落ちた赤と白の二色のコントラストを詠んだものとしています。パロディ的になりますが、明確に落花する様を詠んでみては如何でしょうか。
もう一つ連想するのは、黒沢映画の椿三十郎のラストシーンで、小川に流す椿の色を合図にしたことです。これをモチーフにして、川を流れる椿で一句作るのも、一つの手でしょう。
参考例1 赤い椿白い椿と舞ひにけり
参考例2 急流をサーファーのごと紅椿