俳句的生活(294)-芭蕉の詠んだ京・近江(18)最後の旅立ち(3)清滝-
落柿舎に滞在中のある日、芭蕉は去来の遠縁にあたる人の居宅に招かれて俳事を行っています。次の二句はその折に創られたものです。
すずしさを絵にうつしけり嵯峨の竹 (元禄七年六月上旬)
嵯峨の竹はすずしさを絵に描いたほどに新鮮に見える、という句です。嵯峨の竹はただ見るだけのものではなく、筍の供給源となっていて、今では朝に収穫された筍は新鮮なうちに時間をかけず、京都市中の料亭に届けられています。
清滝の水くませてやところてん (同上)
上の句と同じ日に、訪問先で出されたところてんの清涼感を詠んだ句で、句意はその心太は清滝川の水で冷やしたものであろうか、というものです。清滝は水の清冽なことで有名で、与謝野晶子は次のような歌を詠んでいます。
ほととぎす嵯峨へは一里京へ三里水の清滝明けやすき (『みだれ髪』)
清滝川は保津峡のトロッコ列車の発着場の近くで保津川と合流している川で、芭蕉が訪れた処はこの辺りだったのでしょう。清滝川の源流は北山の奥にまで延び、川に沿って周山街道と呼ばれる道が付けられています。昔は ”鯖街道” と呼ばれていた道で、日本海側の小浜と繋がっています。その途中には中央分水嶺があり、近くの芦生には京都大学農学部の演習林が拡がっています。鯖街道と呼ばれていた頃は分水嶺となっている峠を登り降りしていましたが、現在の周山街道は峠の下にトンネルが出来ていて、車が走りやすくなっています。
学生の頃はこの道を徒歩旅行で日本海に出てみたいと思っていましたが、今となってはとても無理なので、この3月に浜名湖へ行った学友4人で、車で走破してみたいと思っています。
崖下のエス・ユー・ブイや岩清水 游々子