連句(51)
連句(51) 『老鶯の巻』
令和8年6月1日(月)〜6月3日(水)
連衆 紀子 二宮 典子 游々子 初美
各句のコメントは自句自解です。
(発句) 老鶯の声澄み渡る斑鳩路 紀子
斑鳩の吟行に行った時に聞こえて来た鶯の声がとても美しかったので。
春の鶯と違い、やはり歌い慣れた、鳴き慣れた老鶯ならではと思いました。
(脇句) 一樹の影に汗拭う風 二宮
風にふと心地よい涼しさを感じる季節。
(第三句) 旅先の昭和喫茶でお茶をして 典子
前句「汗拭う」より、喫茶店で休憩することを連想しました。
(第四句) 名曲盤の針の音優し 游々子
前句の昭和喫茶より、大学時代に通った名曲喫茶を連想しました。そこでは真空管アンプと大きなスピーカーで、LPレコードがかけられていました。
(第五句) 故郷の一夜の泊まり星月夜 初美
故郷の月は私にとって母を偲ぶ月です。
(第六句) 父の野良着と帽子の案山子 典子
故郷の田畑の景をイメージしました。
(第七句) 蜩の鳴くを聞きたく遠回り 二宮
小さな森の道にひぐらしを聞きたい。
(第八句) 秋刀魚匂ひ路地小路まで 紀子
回り道して家の前まで来たらいい匂い。
(第九句) 雨乞を了へいそいそと茶屋町へ 游々子
こんな雨乞いの僧もいたかと妄想しました。
(第十句) 待ち合わせしてミュージカル観て 典子
茶屋町から大阪キタの茶屋町にある劇場でのデートを連想しました。
(第十一句) 円安に唐の長安凌ぐ京 二宮
円安で世界の人が観光に来てくれるのは嬉しい。
(第十二句) シルクロードの果ては寧楽 紀子
前句の京都から、奈良もまたそれより古い都であった事を思いました。
(第十三句) 冬の月田辺源氏を捲りをり 典子
前句より古典を連想し、冬の月を愛でながら田辺聖子訳の源氏物語を読んでいる姿を想像しました。
(第十四句) 世を宇治山に棲める狸よ 游々子
前句の源氏より宇治を連想し、更に百人一首の喜撰法師の歌に付けてみました。
(第十五句) 不安ある地域地球に句の祈り 二宮
ホルムズから台風ほか不安の多い世の中ですね。
(第十六句) 「夢」御守りを肌身離さず 典子
法隆寺の御守りに「夢」御守りというのがあります。持っていると守って頂けそうです。
(第十七句) 築地塀添うてまほらの花明り 紀子
法隆寺から夢殿に向かう石畳があります。その塀に沿って桜並木がありました。
花の頃はとても綺麗だっただろうと思い詠みました。
(第十八句) 語らう二人若さを競う 二宮
春には若さが似合いますね。
(第十九句) 円空仏笑みて雪解く飛騨の山 游々子
円空は1万を越す仏像を彫っていて、その半数が愛知県と岐阜県から見つかっているそうです。その笑みが雪を解かすだけでなく、積み重なった民族と宗教の対立を溶解できぬものかと思わずにはいられません。
(第二十句) 虚子の書のいとユーモアのあり 初美
笑みから考えました。
(第二十一句)湯気の香に柳の枝の揺らぎをり 游々子
虚子のユーモアより、「行水の女に惚れる烏かな」の句を連想し、烏のとまっている柳の枝を句にしました。
(第二十二句)小野の道風ひらがな優美 二宮
柳というと、花カルタのカエルの一枚を思い出します。
(第二十三句)深草は夏草繁る通い道 游々子
小野道風より、小野小町にまつわる深草少将の「百日通い」を連想しました。
(第二十四句) 新樹晴の仏前結婚 典子
前句の深草より、深草には仏教系の大学があることを思い出し、仏前結婚式を連想しました。
(第二十五句)七色の橋を詠んではくれまいか 紀子
虚子の詠んだ虹の句を思い、河野裕子風に詠みました。
あのような虹の句をもらい心惹かれない女性はいないのでは…
(第二十六句)失恋の日の懐かしきこと 初美
そんな事もあったな〜今度大阪で同窓会があるから行こうか。
(第二十七句)カラフルな長靴のゆく通学路 典子
前句より小学生のほのかな思いを連想しました。
(第二十八句)水たまり踏んで蹴って遅刻 紀子
これも回想、こんな事もあったかと。
(第二十九句)あの月を取って欲しいと鹿の啼く 游々子
秋に鹿が啼くのは恋以外に訳があるのではと詠みました。
(第三十句) 奈良の街空鰯雲浮く 二宮
鹿で奈良を思いました。
(第三十一句)鵲の橋の仕上がり夜ぞ耽る 紀子
前句の奈良の鰯雲から古の都の奈良へ誘われ、百人一首からの本歌取り。
(第三十二句)先ず予備校に受かる生徒よ 游々子
鵲(かささぎ)は中国では「喜鵲」と書き、「お祝い・幸運・めでたいこと」の象徴となっているそうです。
(第三十三句)定年のお祝ひ数多頂いて 典子
前句と自解より定年退職を迎えた人を連想しました。
(第三十四句)第二の青春今真つ盛り 紀子
今定年後の人生楽しんでます。
(第三十五句)夢前の書写の寺へと桜土手 二宮
姫路の西に夢前川(ゆめさき)があります。
名前がいいですね。
右岸に弁慶も学んだといわれる天台宗の書写山円教寺があります。
(挙句) 青空のぞく西のかなたに 游々子
茅ヶ崎にはレベル3の大雨洪水注意報が出ましたが、何事もなく過ぎ去りました。挙句では小さな “幸せ” が大きな “幸せ” に繋がるとして詠みました。


