鬼を狩る子孫 第二部・過去編 第五章 駿府(1)

安倍の流れ

駿河の国は、海と山に挟まれている。

南は駿河湾。
北は山々。

その間を、安倍川がゆったりと流れていた。

この川は、ただの水ではない。

甲斐と駿河を結び、
また内陸と海とをつなぐ道でもあった。

川沿いには人が集まり、
物が動き、
やがて町ができる。

駿府という町も、そうして形をなした。

もともとこの地は、
今川の都ではなかった。

古くは府中と呼ばれ、
国府の置かれた場所である。

役所があり、
租税が集められ、
官人が往来する。

創作小説の挿絵

だが、武の時代になると、
その意味は変わっていく。

守護が入り、
やがてその守護が、この地を根拠とする。

今川である。

今川は、足利の流れをくむ家であった。

だが、その枝は細い。

足利から分かれ、
さらに吉良から分かれた一支流。

本来ならば、
大きく出る家ではない。

ところが、この駿河という土地が、
それを変えた。

東に行けば関東。
西に行けば京。
海に出れば遠国と通じる。

人も、物も、情報も、
必ずここを通る。

通るものを押さえる者が、
力を持つ。

今川は、それを知っていた。

安倍の流れのほとりに、
静かに力が集まり始めていた。